たまり の心の日記から 第6話 第1回コンサルティング Part1

【当時の状況】

「いらっしゃぁい」
霞々の満面の笑みが目の前に現れ、
「場所、大丈夫だった?迷わなかった?」
と、事前にもらった地図だけを頼りに無事時刻通りに来られた私を、部屋の中へ迎え入れてくれました。入った瞬間、ほんわかとした心地よい香りがしました。

「あ、なんかいい香り」
「今日の たまり ちゃんの気分はこんな感じかなぁと思って」

それは、エッセンシャルオイルを焚いたものだという説明でした。そして、入っていくとアンティーク家具のテーブルと椅子があり、そこに座りました。霞々はお茶の準備をしながら座っている私に声をかけてくれ、テーブルにやって来て用意できたお茶を出してくれました。
「これ、なぁに?」
「キャラメルティーよ」
「へぇ…おいしい」

私は飲みながら口の中で香りを感じていました。誰かの家に訪れてキャラメルティーを出してもらったのは初めてでした。これも私に合わせて用意してくれたようでした。

まず、体調について聞かれたので
「薬がないと身体を起こしていられない。睡眠薬がないと眠れない。起きたらおっくうで新聞が読めない」
と言いました。

「でも、そのお薬をもう1年半も飲んでいて治っていないのなら、そのお薬は たまり ちゃんには効いてないんじゃないのかしら?」
「え?そんなはずは・・・飲まないと生きていけないんだよ、起きられないんだよ」
「でも、元気にはなってないんでしょう?」
「……」
「 たまり ちゃん、病気って誰が治すの?」
「お医者さん」
「ほんとに?」
「…へ?じゃぁ…薬」
「お薬はお友達だよ」
「…はぁ…?じゃぁ…誰?」
「自分が治すの。人には自己治癒能力があるのよ」
「……」

まったくもって訳のわからない言葉でした。
「お薬はお友達。必要な時に助けてもらうの。全てを頼るものではないんじゃないかしら」
「はぁ」

でも、次の言葉に、不思議ながらも光を感じたのでした。
「多分、薬がなくてもいられるようになるわよ、もうすぐ」
「人って、そんなに長くは苦しんではいられないから」

…え?どうしてそんなことがわかるの?でも…ほんと?だって私、本当はもう薬なんて飲みたくない。副作用で顔がブツブツだし、便秘薬飲まないと腸の動きが止まっちゃうし。これ、飲まなくても良くなるの?この人いったい何なんだろう…私を洗脳しようとしているのかどうかは、自分が良くなるかどうかでわかるからいいとして…この一言は有料だとしても、今の時点では3万にはまだ至ってないよなぁ…。

初めての感覚にボーッとしつつも頭の中では金勘定をし、その一方で、かすかな期待を胸に抱き始めていました。

会社に行ってないのなら、毎日何をしているのか、と聞かれました。
「私、SMAPの木村拓哉が大好きで、毎日インターネットを見たり、コンビニとか本屋さんに行って、雑誌をチェックしたり、昔のドラマのビデオを借りに行って観たりして…」
と、照れ笑いをしながら、答えました。もしかして馬鹿にされるかしら、と思いましたが、むしろ霞々は肯定的で、ニコニコしながら聞いてくれました。

「ご主人のお写真、持って来られた?」
霞々の言葉に、私は写真を取り出して見せました。しばらくじっと写真を見つめ、最初に出た一言は、
「だんなさまは たまり ちゃんと一緒にいる人ではないと感じるんだけど、どうかしら…」
という言葉でした。

その瞬間、自分の中でモヤモヤとしていたものがパァーッと晴れました。
まだ「好き」という気持ちが残っていて、実は離婚を完全には決意しきれていなかったのが、99%踏ん切りがついた気分になりました。

私にとって主人は一緒にいると張り合ってしまう相手。
私は気が強くて頑張りすぎるところがあるから、もっと甘え上手になると楽になれる。
でも、彼といると私の男性的な部分が強く出てしまう。

同じくらいの力を持っている同士であり、彼が距離を置いて私を見守っているか、包み込んでくれればうまくいくのだけど、結局は私を怖がって距離を置いて他の所へ行ってしまう人のような気がするの、と、霞々は感じた内容を説明し続けてくれました。

私は、不思議だなぁ、なんでわかるんだろう、写真のどこを見ているんだろう…と思いながらも、言われた内容に心当たりがありました。

そして、「彼は私の相手ではない、違うんだ」と、誰かが私のために断言してくれたことがあってもその時の言葉は慰めにしか聞こえなかったのに対し、霞々の言葉は私の心にすごく響きました。「よくぞ言ってくれました!」と心の中で大声で叫んでいました。

「ご主人にどう思われてもいいんじゃないかしら。あなたを捨てて離れて行った人なんだから、『どう思われているのか』『自分の何が悪かったのか』などと悩む必要はないんじゃない?」

この一言に、私は衝撃を受けました。
主人に事実を言い渡されて以来、私はすっかり自信をなくしてそこで立ち止まってしまい、先に進めない状態になっていました。
主人の気持ちや考えを知らされないうちは、自分は完全に元気になることはできないんだ、と信じていました。

それに対して、一緒にいる相手ではない人、自分のパートナーではなかった人、自分にとってもう関係のない人、もうどうでもいい人の気持ちを知る知らないは、これからの私にとっては悩むべきことではない、というのは、全くの新しい発想でした。

今の自分から脱出できずにいた問題の根本がわかったようでした。
それまで、いくら何を頑張っても「これで元気になれる」という確信が感じられなかった私は、霞々の一言に涙が出ました。
心の奥の冷え切っていたところに、「もう安心だよ」と言われているかのような温かさを感じていました。

「目標は元気になること」と、霞々に言われました。
自信をなくして立ち止まってしまったから元気になれなかっただけ、自信をなくす必要がないんだから、前に進める、そして、元気になれるはず、と言われました。

もうすっかり猜疑心も金勘定の意識も消え、自分が元気になれないしくみが明らかになった瞬間、
「 たまり ちゃん、子供のような顔になってるよ」
と霞々に鏡を見せられました。
「子供っぽいところが たまり ちゃんのチャームポイントだから、それをどこででも出せるといいわね」

さらに、私自身のことについて、霞々の感じた見解を伝えてくれました。
あなたは一人で生きて行くタイプじゃなく、誰かと寄り添って行くタイプみたいね、多くの女性がそうであるように、と。
これには、驚きながらも、誰かにはこういって欲しかった私がいたことを思い出しました。

私は、それまで朝から晩まで会社で仕事をしてきて、金銭的に十分自立していて、それなりの職位も与えられていたので、誰かに頼れなくなったら自分で稼いだお金で生きていけるんだし、と思って、自分が「本来はどういうタイプなのか」ということをあまり考えたことがありませんでした。

仕事ができているんだから、生きていくこともできる、それが「タイプ」にあてはまるんだと思っていたのです。

そして、今までのつらかった経験は無駄ではなく、その経験が生きてきて、人の痛みがわかる優しい人になれる、既にある「たくましさ」に「優しさ」がプラスされるのよ、と言われました。

今は弱っていて、そこに近づいてくる人は弱い部分しか見てない人。
でも、元気になって「優しさ」が出れば、そのプラスされた良い部分を見て近づいてくれる人がきっと現れる。
そんな希望に満ちた光り輝く自分の像をイメージすることができ、どこからかエネルギーが湧いてくるようでした。

体もいたわってあげるように、と言われました。
疲れたら、「疲れたねぇ、お疲れ様」と言ってマッサージしてあげると、体は楽になるのよ、と。

最後に、霞々は、ローズのエッセンシャルオイルを1滴ティッシュに垂らして「この香りをクンクンしながら帰ってごらん」と私に渡してくれました。
1滴のオイルにはバラ数十本分が必要なのね、これはこの小さいビンだけで○○円するものなのよ、とふわ~っとした優しい雰囲気で説明されながら、「そんな希少なものを楽しむ世界があるんだなぁ」と何気なく思っていました。

「よかったら、またいらっしゃってみたら」
と霞々は笑顔で言い、私は「うん」とうなずきました。

玄関で靴を履くと、
「今日は来てくれてありがとうね」
と私を抱きしめてくれました。私も
「霞々、私もありがとう」
と、霞々のハグに応え、霞々の温かくてやわらかい体に抱きついて、来てよかった…と感じていました。
「じゃあね、気をつけてお帰りになってね」
と、霞々は微笑みながら一礼をし、バイバイと手を振って見送ってくれました。私もバイバイと言いながら手を振り、ドアを閉めました。

外へ出てみると、来た時よりも自分の視界が広がったように感じました。
空や木々を見上げる、笑顔の私がいました。
私はティッシュを鼻に近づけてローズの香りをお腹の底まで入るように嗅ぎながら、足取り軽く帰って行きました。

【当時を振り返って】

霞々の部屋のドアが開いた瞬間から「あなたのことを心から待っていましたよ」と言わんばかりの微笑みがありました。

そして、私を迎え入れながら惜しみなく醸し出す「welcome!」な雰囲気と、私のことを思い浮かべながら用意してくれた『私仕様』の香りに、「こんな厄介な心の病気だとか言っている病人を、どうしてこの人は丁寧に一人の人間として扱ってくれ、こんなにも歓迎してくれているんだろう」と不思議ながらも嬉しい気持ちをジワジワと感じていました。

そこで相当私の表情はほころんだと思いますが、それでも「自分の考えをコントロールされやしないか」という警戒心と、金額の高さに見合ったことをこの人はしてくれるのだろうかという猜疑心にしばらくは縛られていました。

部屋に入る前から、霞々のコンサルティングが始まって1時間くらいまでは「さんまんえん、さんまんえん」とこぶしを握りながら頭の中で唱えていたのを覚えています。

初回料金は、1時間半のセッションと、親兄弟や夫などの関係者の写真を見てもらうことも含めて3万円(*注釈)で、その金額は何か形として残る商品に対してではなく、話をすることに対してだということに、最初は違和感を感じていました。

また、大病で多額の治療費が必要だという経験も家族含めてなかったので、体の不調に対して支払う額にしては高額だと感じていました。

それが、彼は私のパートナーではなかっただけのこと、と聞かされた瞬間からでしょう、金額のことが頭の中心部分から離れました。
「相手の気持ちがどうこう」から「自分にとって関係がない」と見方を変えられるということが、自分が本当に見つけたい、お金で買えるものなのなら買いたい、と思ってずっと探していた答えだったからでしょう。
そしてそれは、「洗脳」を警戒する理由が全くない答えでもありました。

霞々は、初めてのクライアントさんの初回のセッションではとっても疲労し、その後2日間は寝込んでしまうこともあり、病院に行っても原因はわからず、健康保険の利かない鍼治療などに行かないと回復しない、だから、2日間仕事が出来ず稼げない分と鍼治療代を考えると、そのくらいの金額が見合っていると考えて、3万円の料金設定をしているの、というおおまかな説明は、霞々から電話が来た時に聞きました。

そして、案の定、私が帰った後から霞々はぐったりし、2日間は全く仕事が出来なかったそうです。それだけ集中し、それだけのエネルギーを注いでくれたからこそ、私は大いに納得し、目の前が開けて希望を持って霞々の部屋を出ることが出来たのでしょう。

私はその晩、久しぶりに湯船につかりました。
シャワーで済ませていた日々でしたが、不思議と自分を大切にしようという気が起き、もうその日の夜から自分をいたわり始めたのでした。

山ほどの「なんでわかるんだろう?」「あれはどういう意味だったんだろう?」の疑問が尽きないまま、夜は母と電話で話し、セッションの一部始終を伝えました。
母は、霞々の特別な力に対して全く否定することなく、私が受け入れたことをまるごと受け入れていたようでした。
そのおかげで私も安心して霞々の言葉や雰囲気を思い返しながら、それまでには自分の生活にはなかったエッセンスを取り入れ始めるようになりました。

*注釈:現在は料金改定しています。

次回予告

第6話 「第1回コンサルティング」 Part 2 【霞々の想い】

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